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5月2日,「みにクル狭山公園」最後の調査が終了しました.モニタリングサイト1000で採用されているスポットセンサス調査を体験してもらうことを目的に,2009年6月に開始した「みにクル狭山公園」は,これまでに72回実施,約30名の方に参加していただきました.ご参加いただいたみなさま,ありがとうございました.これまでの調査結果をまとめ,そこからみえてきたことをご報告します.
■記録からみえてくる狭山公園の鳥類相
調査地である狭山公園は,東京都東村山市にある都立の緑地公園で,関東平野西部に位置しています.狭山丘陵の玄関口にあたり,多摩湖・狭山湖周辺の緑地とつながっています.緑地の周囲は住宅地で,散歩や運動のために多くの方が利用する,ごく普通の公園です.
調査は原則的に毎月第一土曜日の早朝に実施しました.1ポイント2分×5回のスポットセンサスを公園内の6か所で行ない,ポイントから50mの範囲内で観察された鳥と,それより遠いところで観察された鳥をそれぞれ記録しました.6か所の調査ポイントのうち,4か所はコナラなどを中心とした武蔵野らしい雑木林,1か所は芝生の広場,1か所はトウカエデ,トチノキの移植林です.またポイント調査終了後に多摩湖(村山下貯水池)堰堤周辺の鳥を数えました.
さて,6年間の調査で,調査ポイントから50mの範囲内では24科54種,範囲外やセンサスの時間外も含むと31科71種,さらに多摩湖周辺も含めると38科89種の鳥類が観察されました.キビタキやオオルリなどの夏鳥,ツグミやジョウビタキといった冬鳥,稀にトラツグミやアリスイ,クイナなども観察されています.
年間の推移をみると,種数,個体数ともに8〜9月に最も減少し,秋から徐々に増えてきて,冬〜春が安定します(図1).個体数は4月と10月にやや増加しており,狭山公園における渡りの時期にあたると考えられます.

6地点×72回の調査で,調査ポイントから50mの範囲内での出現率が50%以上の種は7種(表1).

もっとも出現率が高いのはハシブトガラスで,ほとんど毎回観察されています.その他,ヒヨドリ,シジュウカラ,メジロ,ガビチョウ,ウグイス,コゲラの頻度が高く,これらは年間を通して生息する狭山公園の留鳥と考えられます.樹林や藪の環境があり,標高がそれほど高くない里山・丘陵地の典型的な種構成であるといえます.
個体数の総計では,ヒヨドリが1,147羽と最も多く,特に4月と10〜12月に移動中のまとまった群れが観察されていました(図2).

2位のシジュウカラは夏期を除いてほぼ安定して観察されています.興味深いのは4位のハシブトガラスで,他種が減少する夏期に増加しています.また,ウグイスと外来種ガビチョウは同数で5位でした.ウグイスのほうが早春期に目立ち,ガビチョウは秋期に目立っていました.ササ藪の環境での競合はあるのでしょうか.
6年間の調査の中で,初期にはよく観察されていたビンズイ,ツミが後半観察されにくくなり,一方エゾムシクイ,ウソがここ3年よく観察されているなど,鳥類相の変化がみてとれました.また年によって外来種のソウシチョウがよく観察される冬があり,気温との関係で寒い冬に標高の低いところに下りてきていると考えられそうです.
■長期観察で見えてくること
身近な環境でも,長期的に記録をつけてみると,さまざまな変化が見えてきます.さらに,個々の野鳥の動態をその生態と合わせて考察してみると,生息環境の増減が影響しているのか,気温の変化が影響しているのかなどを推察することができます.気になった野鳥に注目して,出現頻度と各年の気温や積雪量の関係を調べてみたり,同様の環境に生息する競合種との関係を観察したりと,研究テーマの緒は狭山公園のような身近な公園でも見つけることができます.通勤路での観察や一か所の定点観察でも構いません.時間をかけてコツコツと,季節や環境の変化と鳥たちの生態との関係を調べてみてはどうでしょうか.