2023年06月30日

農地ぷらぷら調査(高木)

バードリサーチでは、いろんな環境のモニタリング調査を実施していますが、農地の鳥をモニタリングはシギ・チドリを除くとメニューにありません。海外も含め、農地の鳥の減少はいろんなところで言われてきていますし、これからも日本の農業は変わっていく気配を感じます。耕作放棄地がメガソーラーに置き換わるなどの変化も、まだ続くと思います。そんなわけで、ちょっと、農地の調査の検討のため、先日、あちこち回って試しの調査をしてきました。

農地環境写真collage.jpg

6月も終わりでしたので、繁殖が終わった鳥たちのさえずりは下火。そのため偏りはありますが、今回の調査では、周辺に樹木や林があればホオジロやウグイス、シジュウカラなどが、川や水路があるとカルガモやカワセミが記録されました。宅地が近いとスズメやツバメが多いなど、「そうだよね」という結果を調査票につけながら、調査地点の設定の仕方や調査方法について考えをめぐらしてきました。
メガソーラーの設置された場所でも調査をしてきました。さすがにヒバリやオオヨシキリは記録できないものの、周囲などに草木があったり、下草刈りをほどほどにしている鳥たちにやさしい?メガソーラーだと、種数自体はそれほど農地とは違いはありませんでした。

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調査を行った場所のうち4か所における10分スポットセンサスで記録された種数の比較

今回は、調査のしやすさなどを考えて、車で移動しながら、10分のスポットセンサスを試しました。ですが、周辺環境の影響、パッチ状で季節や年によって変化する植生、大きく移動する記録率に波のある種の影響を考えながら、普通にやったらだめだなぁ、という実感をもって帰ってきました。もうちょっと調査しながら、手立てを考えてみようと思います。
日の目を見ることはあるでしょうか?
posted by ばーりさ at 14:47| 活動報告

森の鳥の聞き取り調査,3か月の調査が本日終了

埼玉県秩父,富士山中湖,長野県志賀高原,北海道富良野を日替わりで聞き取る森の鳥の聞き取り調査。本日で3か月の調査が終了しました。参加者はレギュラーメンバーが6名でプラスアルファという感じで実施していました。参加いただいた皆様,お疲れ様でした。

今年のトピックスは以下のような感じでした。

埼玉県秩父
シカの影響で下層植生がほとんどない調査地ですが,近年,ウグイスが聞かれたり,コルリも聞かれる機会が増えるなど,下層植生を利用するような鳥が,徐々に増えている傾向がありました。ただ,今年はその傾向が,元に戻ってしまったような感じで,ウグイスも1回しか聞かれず,コルリの頻度も低い状況でした。

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秩父でのコルリの記録頻度。赤が今年の結果

一時的な揺り戻しなのか,この傾向がなくなってしまったのか,来年以降も注意して聞いていこうと思います。なお,それ以外の傾向としては,メジロなど暖かい地域の鳥の増加がありますが,この傾向は進んでいるようでした。

富士山中湖
ホトトギスがあまり聞かれなかったのが,気になったところでした。

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山中湖でのホトトギスの記録頻度。赤が今年の結果

山では減少傾向にあり,ウグイスの減少と関連していると考えられていますが,ここでもシカを見る頻度は増えているものの,ウグイスの減少はそれほど顕著でもないので,同じような状況にあるのかはわかりません。マイクのある場所は道のすぐわきでシカの影響が出にくい場所ではあるので,もっと森の中の方はウグイスの減少が顕著で,それがホトトギスの減少に影響しているのかもしれません。そういうところは,1点のみのモニタリングの弱点かもしれませんね。

長野県志賀高原
今年はクロジのソングポストがマイクのそばにあったのか,さえずりが良く聞こえたのが特徴でした。ただ,距離が近かったので,そんな印象を持つだけで,特に例年と頻度が違うわけでもないですね。

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志賀高原でのクロジの記録頻度。赤が今年の結果

また,6月下旬になってから,調査終了間際の時間帯に,毎回エナガの家族がやってくるのが印象的でした。エナガの群れに囲まれている感じは,無人マイクでないとできない経験でした。



北海道富良野
富良野のマイクが不調で,6月はじめで聞き取りができなくなってしまいました。ちょうどその頃にヒガラが例年と違い,ほとんどさえずりが聞かれなくなってしまっていたので,何が起きているのか(あるいは,たまたまさえずらない日があっただけなのか)知りたかったのに,残念でした。来年は復活してくれることを願います。

それ以外の主要種のさえずり頻度はこちらから聞くことができます。
http://www.bird-research.jp/1_katsudo/forest/hikaku.pdf

来年も4月1日から実施する予定です。ホームページなどで告知しますので,興味のある方はご参加ください。


posted by ばーりさ at 11:48| 活動報告

2023年06月14日

さえずりはだんだん下火に

4月から続けてきた森の鳥の聞き取り調査もあと半月で終了です。
さすがに6月も半ばになると,鳥たちもさえずりモードから子育てモードへとシフトしていて,さえずりはだんだん下火になってきています。

いつも元気でさえずっているヒガラでさえ,こんな感じ。赤線が今年のさえずり頻度。縦軸がさえずり頻度,横軸が季節の推移,右下がりになっていて,さえずりが不活発になってきているのがわかります。
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標高の高い志賀高原はほかの地点よりは活発ですが,それでもじりじり下がってきています。

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そんな中,元気なのがクロジ。
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例年だと下がってきて良いのですが,盛り上がってきています。先日の佐渡の記事では増加しているかも,と,植村が書きましたが,志賀高原でも増加していて,ライバル増加で活発にさえずるようになっているのでしょうか?

来年以降も同じパターンになるのか,モニタリングを続けていきます。

posted by ばーりさ at 10:20| 活動報告

2023年06月12日

今年もBR事務所にクモを食べにヒヨドリがやって来ました

去年,事務所にクモを食べにヒヨドリが来ていることニュースで報告しましたが,

スクリーンショット 2023-06-12 101729.jpg
ヒヨドリは蜘蛛の暮らしを知っている:バードリサーチニュース 2022年8月: 5
今年もヒヨドリがしばしばやってくるようになりました。
ただ,ちょっと覗いては,去って行ってしまいます。まだ看板にいるクモが小さいから,大きくなるのを待っているのかな? と思い,クモの大きさを測ることを試みました。
でも 1mmとかの小さなクモをどうやって測るのだろうと,クモの研究者に聞いてみたところ,ノギスをできるだけ近づけて測るか,等距離で撮影して,測るということをしているのだそうです。
ノギスは手が震えるぼくには無理な話なので,等距離の撮影を試みました。

つくった装置がこれ。かっこいいでしょ。
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これを看板に押し当てて,撮影しようという企画です。そして,同様に撮った物差しと重ねると。
スクリーンショット 2023-06-12 095834.jpg

測れました。でも問題が2つ。
1つ目は,クモが網を張り始めるより前ならよいのですが,張った後だと,看板に棒を押しあてたときに網に触ってしまって,クモが逃げてしまうこと。9個体中3個体に逃げられました。網を張り始めるより前に撮るか,別の方法を検討した方がよさそうです。
2つ目は,時期を逸してしまったこと。どうやって測ろうか考えてモタモタしているうちにクモが大きくなってヒヨドリがクモを食べ始めてしまったのです。やろうと思った時に即座に始めないとだめですね。クモの成長が速いことを実感できたとともに,人生の教訓も得られました。

ということで,この検証は今年はできそうにありませんが,ヒヨドリとクモの関係はほかにも調べたいなと思っていることがあって,そのデータも取り始めていますので,結果が出ましたら,またブログかニュースレターでご紹介したいと思います。


posted by ばーりさ at 10:18| 活動報告

2023年06月08日

大阪で講演をしました

6月3日、日本バードレスキュー協会・日本野鳥の会ひょうご・日本野鳥の会大阪支部共催の第23回鳥類学講座に、講師として呼んでいただきました。

大雨の影響で前日から新幹線が動かず、どうしたものかと思いましたが、羽田–神戸の飛行機で会場にたどりつけました。会場でもあり大阪支部も入っている建物、素敵ですね。IMG_0597 2.jpg

3時間の講演で、私が大学院で行っていたアカショウビンの生態や渡りについての話と、バードリサーチで少しずつ作っている気軽な研究参加のための仕組みづくりや今後の野望について話をしました。講演の後には、バードリサーチに新しく入会してくれた方も多く、楽しんでいただけたかなとホッとしました。

声をかけてくださった日本バードレスキュー協会、特に村濱さんはじめ、日本野鳥の会ひょうご・大阪支部の皆様、ありがとうございました。
posted by ばーりさ at 15:31| 活動報告