今年1月のバードリサーチニュースにフィリピンのコーヒー農園を夏鳥の越冬地にしたいという記事を書きましたが、2月初めに、この記事で鳥類調査のことを書いたサグパット(Sagpat)のやや北にある、マウンテン州のタジャン(Tadian)という町に行ってきました。
フィリピンのコーヒー農園での野鳥調査は、コーヒー栽培を支援している現地NGOのCordirella Green Networkとの共同プロジェクトです。サグパットでは調査を始めようとした矢先に新型コロナウイルスのためにフィリピンへ渡航できなくなったので、ICレコーダーを使った録音調査をしましたが、今度こそ現地調査でコーヒー農園と自然林の野鳥の違いを調べたいと思って、その下見のために行ってきました。
宿泊したLayog Country Farmは山の中にぽつんとある農場で、朝は野鳥の大コーラスに包まれます。
フィリピンのコーヒー農園での野鳥調査は、コーヒー栽培を支援している現地NGOのCordirella Green Networkとの共同プロジェクトです。サグパットでは調査を始めようとした矢先に新型コロナウイルスのためにフィリピンへ渡航できなくなったので、ICレコーダーを使った録音調査をしましたが、今度こそ現地調査でコーヒー農園と自然林の野鳥の違いを調べたいと思って、その下見のために行ってきました。
宿泊したLayog Country Farmは山の中にぽつんとある農場で、朝は野鳥の大コーラスに包まれます。
素敵な建物に泊まりました。
夜、建物のそばにやってきたルソンオオコノハズク。
しかし・・・、向かいの山の斜面の森に、焼かれている場所が見えました。こうした焼き畑によって森林が野菜畑になっていきます。
フィリピンでは焼き畑による森林破壊を減らすため、なるべく木を切らずに作物を育てる森林農法が推奨されているそうです。日本で森林農法というと特別な取り組みという印象がありますが、今回訪問したマウンテン州では広く行われている農法で、バナナ、マンゴー、ドラゴンフルーツ、ココナツ、パパイヤ、トウガラシ、カカオ、そしてコーヒーなどが生産されています。
この図は訪問したコーヒー農園で撮影した写真の位置を航空写真に落としたものです(ピンクは宿泊したLayog農園)、開けた場所と森林との境目にコーヒー農園が点在していることがわかります。こうした場所を緩衝地域として残しながら野鳥の住む森を守れないか、そしてその効果を実証するために、森林農法のコーヒー農園にどのくらいの野鳥が生息できるかを明らかにしたいと考えています。
森林農法でコーヒーを栽培している農園の写真をいくつかお見せします。いずれも数年前にコーヒーノキを植樹したばかりなので、樹高はまだ50センチくらいです。
自然林に植えられたコーヒーノキ。樹木は高いもので20mくらいです。
ここはハンノキ植林地にコーヒーノキを植えています。
この地域によく見られる松林に植えられたコーヒーノキ。
ここはコーヒーノキだけでなく、バナナやトウガラシも植えられています。地上で見ると木が少ないように見えますが、次の写真をご覧ください。
ドローンで撮影すると、大部分は樹冠の閉じた森でした。右の方は開けていてバナナが並び、中央付近もバナナが見えます。
高木の樹冠の下にバナナが階層構造を作っています。こういう森林構造だと、自然林に比べて鳥類種にどういう違いがあるのでしょう。
この地域では2000年代になったころから換金作物として野菜栽培が広がり、急斜面の森林を焼いて単一品種の野菜を栽培する場所が増えてきました。同じ種類の野菜だけを栽培していると価格変動の影響を受けますし、フィリピンでは台風で全滅ということも起きるため、農家の収入が不安定になってしまいます。Cordirella Green Networkが支援している森林農法のコーヒー栽培は、コーヒーを量産して儲けようという考えではなく、多品種栽培をすることで農家が安定収入を得られるようにしながら、自然環境も守っていくことが目的だそうです。バードリサーチもそれに協力して、野鳥生息地を守るコーヒーという付加価値を付けるような森林の維持や管理ができないかと考えています。